ポーランド映画「Kler(聖職者)」を観て

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先日当ブログでも紹介した、今ポーランドを騒がしている一番ホットな映画「Kler(聖職者)」を見てきました。

ポーランドで話題の映画「KLER(聖職者)」

2018.09.25

公開から1週間たった週末に見てきたのですが、地元のシネコンでは1日14回(!)も上映しているにも関わらず、座席はほぼ満席。学生からお年寄りまで幅広い層の観客が来ていました。
友人が住んでいるZabrzeというポーランド南部の市では、公開初日の上映チケットはほぼ売り切れになり、シネコンの駐車場がKlerを見に来るお客さんで満車。周辺はKler渋滞が起きていたとか(笑)。これはもう社会現象です。

10月8日時点での観客動員数は約270万人。人口3800万人のポーランドでこの数字は相当です。しかも公開してから約10日しか経過していないので、今後数字は更に大きくなることでしょう。ポーランド人のパートナー曰く、間違いなくポーランド映画史上最大のヒットになると言われている、とのことです。

ストーリー(ややネタバレ注意)

メインの登場人物は4名の聖職者たち。

冒頭に登場する酔っ払いのパーティーシーンに出てくる3名の神父は、数年前に起きた火事の際にこのうちの1名を救出したことから知り合った仲間。毎年火事があった日にみんなで集まり、お酒を飲んで大騒ぎをしながら当時を懐かしんでいる…らしい。(というのも、一緒に見に行ったパートナーも冒頭のエピソードの記憶が曖昧というので…もちろん私はポーランド語からダイレクトに理解していないため、あくまでもこのエピソードは多分、です)

3名の神父はそれぞれポーランドにおける神父の実情を投影したキャラクターであると言えます。

神父①
いわゆるエリート神父。クラクフ地区司祭の下で働いており、暮らしぶりもかなり裕福。所有するコンピューターはMac、高級車に乗っていいアパートに住んでいます。上昇志向も強く、出世するためにあらゆる機会を狙っており、他人を貶めることもいとまない野心の強い人物。幼少期に教会の孤児院で育っており、孤児院における児童虐待を目撃していたことによるトラウマあり。
そして彼には大きな秘密が。

神父②
中間層の神父。そこそこの規模の教会に属し、学校で宗教の授業も持っています。教会で信者の子供が自殺未遂を図ったことで、彼による児童虐待により自殺したのではないか、との疑いをかけられ、地位と立場を失っていきます。
彼もまた、幼少期に神父による児童虐待を受けた被害者。

神父③
田舎の村の神父。上記2名に比べるとかなり貧しい生活をしており、車も普通車、生活している家も質素そのもの。そして彼はアル中で教会のあちこちにお酒を隠しては、酒を飲まないといられない堕落した人生を送っています。
また、彼が持っている最大の秘密。それは、お手伝いに来ている女性と恋愛関係にあること。そしてその恋人はなんと彼の子供を妊娠してしまいます…。

地区司祭
クラクフ地区を管轄する一番地位の高い聖職者であり、豪華絢爛で巨大な新聖堂を建設するために裏社会へ手を回したり、政治ゲームをしたり、教会に関わるスキャンダルの火消しに、と忙しい。実は彼は、社会主義時代に秘密任務に携わっており、彼の現在の地位を守るためにもその秘密は絶対にバラされたくないもの。

これら4名の主要人物を中心に、教会内における様々なスキャンダルそして裏側がこれでもかっと描かれています。監督自身はポーランドにおけるカソリック教会の影響力及び宗教に対する盲目的なポーランド社会について強い危機感と疑問を抱いているそうで、そんな監督によるポーランド社会への強烈な問題提起が行われているのがこの映画だと言えます。

Klerをより深く鑑賞するために知っておくといいポーランドの現実

この映画をより楽しむためにも、近現代ポーランドについて知っておくと更に理解が深まります。映画の中にも描かれていたエピソードを中心に、ポーランド人パートナーから教えてもらった事をいくつかご紹介します。

①神父間格差
映画の中で描かれている神父間格差も非常にリアルなもののようで、ポーランドの現実を投影しているのだとか。ミサの際に信者から寄付されるお金が映し出されるのですが、中間層の神父のミサの際には紙幣が多く寄付されているのに対し、貧しい村の神父のミサでは硬貨ばかりが寄付され、ミサへの参加人数も微々たるもの。また登場する神父それぞれの生活様式、物質的なものからも貧富の差が見て取れます。

②社会主義時代、教会は反共産主義のアイコンだった
1989年まで続いたポーランドの社会主義時代、多くの共産主義国家が宗教を排除していたのに対し、ポーランドでは教会はなくならず、人々の支持を多く集めていた場所で、反体制のアイコンとして社会主義体制と戦っていた。社会主義体制に疲弊していた人々の心のよりどころが教会だったのです。

③教会内スキャンダル(児童虐待、性暴力問題)と隠ぺい体質
アメリカやアイルランドでは、カソリック教会の聖職者における児童虐待や性暴力問題が明るみに出てから、センセーショナルな事件として大問題になりましたが、ポーランドでは未だに教会関連スキャンダルはかなりセンシティブでアンタッチャブルな問題です。勿論何か事件が起きたときに報道はされていますが、教会は具体的な改善対策を取ろうともせず、あくまでも事実を認めず隠ぺいしようとすることが多く、多くのポーランド人が失望し憤慨しているそう。

教会の反応

本作品が公開されてから、あちこちで教会関係者による記者会見が開かれ、教会側の意見が発表されていますが、最近ではバチカンに対する小児性愛問題の世論意見が厳しく、大分慎重な発言をしているように見受けられます。多くの人々は、本作品で描かれているような教会が抱えている問題は事実である、とした上で今後事態を改善させていきたい、と言っているとか。また、とある司教は「むしろこの映画で描かれているよりも現実はひどい」と告白しているのだとか。

勿論一部には「全く誇張された内容であり、事実とは認められない」と反対意見を表明する神学者や教会関係者もいるそうです。
監督の目論見通り(?)、映画によってポーランド社会全体が大きな議論の渦中にいると言えます。

現代ポーランドを知る上での良い材料

現在ヨーロッパではバチカンの小児性愛事件に関する問題が大きく取り扱われており、ポーランドでも教会に対する抗議デモが起きたり、教会関連のネガティブなニュースを見ない日はないほどです。

これからポーランドの教会はどう変わっていくのか、社会はどのように変化するのか、現代ポーランドを見ていく上でもいいきっかけになる映画でした。正直、日本では現代ポーランドのこのような部分は中々伝えられませんからね。

皆さんも字幕付きで見られるきっかけがあったら是非ご覧になってみてください。

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