カソリック教会神父による児童性愛被害を描いたドキュメンタリー「ただ誰にも話さないでください(TYLKO NIE MÓW NIKOMU)」

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5月中旬にyoutubeに公開されてからポーランド全土を揺るがしているドキュメンタリー映画「ただ誰にも話さないでください(TYLKO NIE MÓW NIKOMU)」。ポーランドに住んでから嫌となるほど耳にすることが多い、カソリック教会の神父や聖職者による信者の児童に対する性的犯罪がテーマとなっています。

同じテーマであれば昨年公開された「Kler(聖職者)」という映画が大ヒットし大きな話題になったとともに、様々な議論をもたらしましたが、今回のドキュメンタリー映画のインパクトは「Kler」の比ではない!と我が家のポーランド人は鼻息荒くしています。

ポーランド映画「Kler(聖職者)」を観て

2018-10-14

ポーランドで話題の映画「KLER(聖職者)」

2018-09-25

「Kler」がフィクションであったのに対し、「ただ誰にも話さないでください(TYLKO NIE MÓW NIKOMU)」はノンフィクションのドキュメンタリーで、実際に聖職者による児童性愛の虐待を受けた被害者が実名と顔を出して映画に出演し、自分に危害を加えた神父たちを直接訪れ過去の罪について問いただしている映像が含まれてる点、また性犯罪者として刑務所で服役したはずの神父が再び教会に戻り児童に接している事実、また民主化運動の元リーダーであり元ポーランド大統領のワレサ氏の宗教的指導者を務めた神父が幼児に対し性的虐待を与えた事実(!!!)などがあぶり出されている点等が特に衝撃的である、と我が家のポーランド人の意見。

というのも、「Kler」を紹介した際にも触れましたが、ポーランドではカソリック教会の影響力は絶対で、仮にも教会や神父によって何か間違いがあったとしても、世間体を気にして声を大にして世間に公表することが憚られたり、これらの問題は「アンタッチャブル」な問題として秘密裏に処理され、適切な法的処分が下されなかったりしている、といったポーランド社会独特の問題があったため、似たような事件が過去に外国であったとしても、ポーランドでは大きな問題になり難かったという社会背景があります。

これまでポーランド国内では「見ざる 言わざる 聞かざる」の態度が取られ続け、数多くの教会スキャンダルが報道されても「それは私の通っている教会とは別の問題だ「一部の人たちにだけある問題で教会をやり玉に挙げる必要はない」と、それら報道を信じない人が(特に農村部や高齢者に)多かったのだとか。今回のドキュメンタリーは多くの反響を呼び、民営放送局でも放送され、インターネットをする機会がない人にも多く事実が伝わっていることでしょう。

常日頃、カソリックと強すぎる繋がりがあるポーランド社会を嘆いている我が家のポーランド人は「Klerもセンセーショナルだったが、今度は本当にポーランド人が目を覚ます時が来たと思う!いや、覚まさないといけないんだ!」と熱く語っています。

今回の問題提起を受け、与党であるPIS(法と正義)は、映画が公開されてから3日後の5月14日、直ちに現行の児童性愛犯罪者に対する法律を改正、これまで設けられていた時効制度をなくし、児童に対する性犯罪に関しては時効を設けない、と即座に法改正を行いました。それほどまでに世論の声が大きかったのでしょう。また、5月26日に控えているEU議会選挙の為にも、これ以上支持者を失いたくないという与党PIS(法と正義)の思惑もあります。ちなみにこのPIS、主な支持母体はカソリック教会及びその信者でありますが、それでも法改正に踏み切ったというのはかなりのインパクトがありました。

これまでのポーランドの法律では、児童性愛に関する事件の時効は15年であり、被害者である児童が成人しやっと声を上げられるようになっても法的に何も罰を下すことが出来ませんでした。大人になり被害を訴えたところで救われる先がなかったのです。

本作品内で被害者が直接話を聞きに行った元神父たちは、謝罪の言葉もなく言い訳ばかり。「あれは悪魔が私にさせた行為で、私のせいではない」「なぜ私がもっと若い時に訪れてくれなかったのか。そうすればもっと違う謝罪の仕方が出来たかもしれないのに、もう年を取りすぎて出来ることがない」「もし私を許してくれるのなら君の手にキスをさせてくれないか?」等々、耳を疑いたくなるような言葉を次々と犠牲者に告げます。また、教会関係者も事実をどこまで重く受け止めているのか、取材にも応じずに事実をただ隠そうとしているだけ。ただただ見ていて気持ち悪くなる、ぞっとする内容ですが、それがポーランドで起こっている事実であるから余計重みがあります。

このドキュメンタリー映画はクラウドファンディングで集めた資金を基に制作され、youtube上での単独配信で公開されました。5月11日の公開から5月22日現在まで、累計閲覧回数は2100万回を超え、テレビのニュース番組ではほぼこの映画の話題で持ち切り。連日(毎時間?)様々な専門家及びコメンテーターによって、カソリック教会による児童性愛問題をどうするべきか、ポーランドが国家として取り組むべき課題は何なのか、一日中討論が繰り返されています。

暫くは終息しそうもないこの騒ぎ。とことん掘り下げて、ポーランド社会の膿を出し切ってくれたら…と思うのですがどうでしょうか。

なお、本作品には英語字幕もついています。決して清くない部分も山盛りのポーランドのカソリック社会について、是非現実を確認してみてください。

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