グダンスク市長刺殺事件に対するポーランド国内の反応

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2019年1月13日、毎年恒例のチャリティーイベント「Wielka Orkiestra Świątecznej Pomocy(Great Orchestra of Christmas Charity)」のファイナルを祝うステージ上で、グダンスク市長であるPaweł Adamowicz氏がステージ上に乱入した男に刃物で襲われ刺殺される事件が起きました。

搬入先の病院では、市民300人以上が献血に協力し、緊急手術の成功を祈っていましたが、残念な結果となってしまいました。

ポーランド毎年恒例のチャリティーイベントの会場で起こったグダンスク市長刺殺事件

犯人の男は報道関係者の許可証を保持し、ステージへ入り込んだものとみられており、市長を刺した後壇上で「私はPO(市民プラットフォーム=前政権の政党でPaweł Adamowicz氏がかつて所属していた現・野党)により不当に逮捕され収監された」と叫んでいたそうです。

このチャリティーイベントはポーランド全土を挙げての大々的なイベントで今年で27回目の開催。各自治体もイベントをサポートしとり、チャリティーイベントの最終日には各地の広場や特設会場でチャリティーコンサートを行ったりと、大晦日に行われるコンサート並みの盛り上がりを見せます。勿論テレビ中継も入っており、今回の事件は会場に集まった数百人以上の観客及びテレビカメラの前で公然と実行された衝撃的な事件でした。

★事件の際に行われていたチャリティーイベントについては過去の記事をご覧ください

ポーランドのチャリティーイベント「Wielka Orkiestra Świątecznej Pomocy(Great Orchestra of Christmas Charity)」

2018-01-16

本事件を受け、チャリティーイベント主催団体の代表であるJerzy Owsiakは団体の代表を辞任。本来であれば幸せな雰囲気で幕を閉じるはずの慈善イベントが悲しい結末を迎えてしまいました。

https://www.tvn24.pl/tvn24-news-in-english,157,m/christmas-charity-boss-jurek-owsiak-quits-after-mayor-adamowicz-s-death,900862.html

ポーランド国内では、Paweł Adamowicz氏の死亡を受け、国内各地で追悼集会が開かれ、ろうそくを手に深い悲しみに包まれるとともに、非暴力を訴える市民で溢れかえっています。

<2019年1月16日追記>
ポーランド政府はPaweł Adamowicz氏の葬儀が行われる2019年1月19日を国喪とし、zakopane(ザコパネ)で開催予定のスキージャンプワールドカップの際にも、会場では音楽などをかけずに静かに行うことが公式発表されました。

刺殺されたグダンスク市長Paweł Adamowicz氏の経歴

出典:Paweł Adamowicz Facebook

政治家の死により、ここまで全国的に大きな反応があることに日本人の私は素直に驚いてしまいましたが、ポーランド人パートナーの話を聞くと、Paweł Adamowicz氏は単なるいち地方政治家に留まらない影響力と市民からの支持があったと言います。

地元グダンスク大学で法学を学んだPaweł Adamowicz氏は、在学中に「連帯」による労働者のストライキ運動に参加し、その後グダンスク市議会議員に当選、2期を務めあげました。1998年にはグダンスク市長に立候補し、70%以上の得票率を獲得し、33歳の若さで市長に当選。以後、5期を務めたのち、昨年10月に行われた地方選で6期目の市長に選ばれたばかりでした。

Paweł Adamowicz氏はかつてPO(市民プラットフォーム=現野党)に所属し(今回の選挙では無所属として立候補)、リベラルな思想の持ち主として、また立派な地方政治家として多くの人々の支持を集めていたそう。

私のパートナーはグダンスクに居住したこともなければ、直接的な関係もないにもかかわらず、Paweł Adamowicz氏の訃報を聞きニュースを見ながら「本当に悲しみしかない。ひどすぎる」と涙していました。普段はかなりシニカルな目線で政治を語っている人が、政治家の死により涙するのは意外なことで、そこまで影響力を持っていたのか、と思うほど。

また、ポーランド人の多くの友人は、事件後TwitterやFacebookのアイコンをグレーベースに追悼リボンを施したものへ変更し、個人への哀悼の意を表しています。これら多くの人はグダンシク市民ではありません。正にポーランド中が深い悲しみに包まれているといっても過言ではありません。

今回のグダンスク市長刺殺事件を受けてのポーランド国内の意見

各報道機関では事件後、ほとんどの番組で事件の続報を取り上げており、様々な意見が交わされています。
中でも興味深いのが、PIS(法と正義=現政権の政党)に変わった2015年から、公共の場で交わされる「議論」の言葉が非常に攻撃的になってきており、今まででは考えられないような過激で刺激的な言葉が日常生活にあふれ始めてきたことが、少なくともこれら犯罪に影響を与えているのではないか、という見解。

ポーランドで重要なジャーナリストの一人とされているMonika Olejnik(モニカ・オレイニック)氏のインタビュー番組内で、著名な社会学者であるIreneusz Krzemiński氏も同様の見解を述べています。

★TVN インタビュー番組 Kropka nad i CHECK!

「議論」とは言われていますが、教養のある「まともな」人々が聞けば教養のない酷い言葉が使われており、議論にすらなっていない、というのが我が家のポーランド人の意見。具体的には人権を無視した個人を侮蔑するような言葉遣いで相手を攻撃したり、議会の場でこのような言葉を叫ぶ、など、これら政治家による言動が所謂「分別のつかない」人々を刺激し、攻撃的な行動へ駆り立てている、と。

それら言動をまともな人が耳にしても「全く教養のない発言をして恥ずかしい」「何を言っているんだ」と相手にすらしないそうですが、精神異常をきたしている人々には、ただただ刺激にすらならず、まるでかつてのナチスのように人々を扇動しているように見える、との声もあります。

実際、現政権であるPIS(法と正義)の代表であるJarosław Kaczyński(カチンスキ)氏は、イタリアの極右政党と接近しヨーロッパ議会内での連携を模索しており、隣国のハンガリー、スロバキア、オーストリアと共に、ヨーロッパ内で右傾化が懸念されている国の一つに数えられており、現政権による様々な政策による民主主義の危機を迎えていると言われているほど。

これらの見解は、社会学者や心理学者から出ており、決して素人の一見解ではないという事も注目に値します。
勿論、政府寄りの報道をする国営放送TVPではこれらの意見は紹介されていません。様々な側面から事件を見ていくことが必要です。あくまでも、一意見としてこのような懸念がされていることを知っていただければと思います。

故人の冥福を祈るとともに、二度とこのような凄惨な事件が起きないよう、社会が間違った方向へ導かれないことを願うばかりです。

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2 件のコメント

  • こんにちは、はじめまして彩子と申します。2016年11月から2017年5月までGdańsk に滞在し、現在はŁódźに滞在しています。
    事後報告になり申し訳ありません。
    日本の家族や友人にもこの出来事を知って頂きたくFBにてシェアさせていただきました。
    SNSを通じてグダニスクはもちろん、他県でも大変な悲しみに包まれていて、正直驚きました。
    もし、現東京都知事や総理がが同じ目にあわれたら、はたして日本国民はグダニスクの市民の皆さんの様になるのか?と考えてしまいました。

    • はじめまして。
      シェア大歓迎です!ありがとうございます。

      私も連日の報道や市民の反応を見て(弔問帳に記帳するために寒空の下4時間以上!待っていたり)、日本では考えられない光景だと感じました。

      勿論故人の人徳もあるのでしょうが、このような感情の共有の為に人々が道に出て行動を起こす、というのもポーランドらしいですね。ブラックコビエタの件然り。

      私は正直に何か羨ましいものを感じました。うまく表現できなくてもどかしいですが。

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